人との会話には、知らず知らずのうちに「自分らしさ」がにじみます。
特に、仕事の場ではなおさら。成果や効率を求められる一方で、
「どんな言葉で、どう伝えるか」は、信頼や空気感を左右する大切な要素。
今回ご紹介するのは、
相手への敬意をさりげなく込めた“口癖”──まるで装いを整えるように、
自分を整えてくれる「言葉のアクセサリー」たちです。
1.「私の考えとしては」
自分の意見を伝えるとき、つい“断定的”な口調になっていませんか?
そんなときに添えたいのが、「私の考えとしては」というひと言。
これは、事実を主張するのではなく、「一つの視点として」共有する姿勢を表します。
相手を否定しない前提で話ができるため、たとえ意見が違っても、
お互いに安心して対話ができる空気が生まれます。
たとえば会議やディスカッションで意見を言うとき、
この一言があるだけで「柔らかく、でもしっかりと伝える」ことが可能になります。
自分の立場を守りながら、相手の考えにも敬意を払う。
そんな大人のバランス感覚が宿る言葉です。
2.「結論から話すと」
丁寧に話そうとして、前置きが長くなってしまうことはよくあります。
でも、仕事の現場では、相手の時間も思考も尊重したいもの。
「結論から話すと」と最初に一言添えることで、
相手は話の“ゴール”をイメージしながら聴くことができ、
結果的にスムーズで納得感のあるコミュニケーションが生まれます。
これは単なる効率化ではなく、“思いやり”のある整理術。
「この人、分かりやすくて頼れるな」と印象づける力にもなります。
話が長くなりがちな人ほど、ぜひ取り入れてみてほしい“口癖”です。
3.「例えば」
抽象的な説明だけでは、相手に真意が伝わらないことがあります。
そんなときに魔法のように効くのが、「例えば」という導入。
「例えば◯◯のような状況で…」と具体的なイメージを共有することで、
言葉がグッと立体的になります。これは、伝えることだけでなく、
“共感をつくる”ことにもつながります。
実例を出すことで、相手の記憶にも残りやすく、
「この人はちゃんと相手の理解を考えて話しているな」と思ってもらえる。
想像力のチャンネルを合わせる──そんな知的な優しさが宿るひと言です。
4.「レベル感」
ビジネスでは、「伝えたつもり」がトラブルのもとになることがあります。
成果物の期待値がずれていたり、求められている精度が食い違っていたり──
そんなミスを防ぐために便利なのが、「レベル感」というキーワード。
「どのくらいのレベル感で作ればよいですか?」
「ざっくりでいいのか、きっちり精緻にまとめるべきか?」と事前に確認しておくと、
相手との“暗黙の前提”を可視化でき、行き違いを防ぐことができます。
このひと言があるだけで、相手は「任せても大丈夫」と感じやすくなる。
結果として信頼関係が深まり、自分自身もストレスが減るのです。
地味だけれど、とても実用的な言葉のアクセサリーです。
5.「立ち回る」
少しカジュアルにも聞こえるこの言葉、
実は仕事における“高度な配慮”を象徴する表現でもあります。
「立ち回る」とは、場の空気や相手の立場を読みながら、
最も良い結果を生み出すために動くこと。
つまり、ただ我を通すのではなく、“全体最適”を考えた柔軟な行動です。
この言葉を使うことで、「感情ではなく、状況に合わせた判断を大切にしている」
という姿勢が伝わります。そして、言葉にすることで、
自分自身の動き方を“俯瞰する”習慣も身につくようになります。
仕事におけるスマートさ、しなやかさ。
その裏には、こうした言葉の使い方が息づいているのかもしれません。
話し方は、自分を包む“声の服”
どんな言葉を選ぶかで、人の印象は大きく変わります。
高価なスーツや立派な肩書よりも、
“相手を尊重する話し方”は、ずっと長く記憶に残るもの。
言葉を選ぶことは、思いやりをまとうこと。
それはまるで、声のなかにひとつ、上品なアクセサリーを身につけるようなもの。
明日の仕事で、ひとつでも使ってみたくなるような、
そんな“口癖”が見つかっていたら嬉しいです。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉