── 30代からの自己理解
20代の頃は、
「もっと成長したい」
と、よく思っていた。
もっと仕事ができるようになりたい。
もっと人と話せるようになりたい。
もっと社交的になりたい。
もっと行動力のある人になりたい。
もっと自信を持ちたい。
今の自分には、まだ足りないものがたくさんあると思っていた。
だから、本を読んだり、人と会ったり、新しいことを始めたり。
少しでも「理想の自分」に近づこうとしていた。
でも、30代になってから、少し考え方が変わってきた。
最近は、
「自分は、こういう人間なんだな」
と思うことが増えた。
そして、不思議なことに、
自分を変えたいと思うことが、少なくなった。
「変わる」より「分かる」
これは、成長を諦めたということではない。
むしろ逆なのかもしれない。
自分のことが少し分かってきた。
自分は、人がたくさんいる場所があまり得意ではない。
初対面の人がたくさんいる場所では、最初は少し疲れる。
でも、必要になれば「人と会うモード」に切り替えることはできる。
一人で過ごす時間も好きだ。
でも、ずっと一人でいたいわけでもない。
新しいことを始めるのは好きだけれど、何でも勢いで飛び込めるタイプではない。
考えて、考えて、それでもやってみたいと思ったときに動く。
昔は、こういう自分の性格を、
「もっと変えた方がいいのかな」
と思っていた。
今は、
「まあ、こういうタイプなんだろうな」
くらいに思っている。
「根が陰キャ」でも、別に困らない
自分で言うのもなんだけれど、僕はたぶん根が陰キャだ。
大人数の飲み会が大好きなわけでもない。
初対面の人とすぐに盛り上がれるわけでもない。
一人でいる時間も、かなり好きだ。
昔だったら、
「もっと社交的にならないと」
と思っていた。
社交的な人を見ると、
「こういう人になれたらいいな」
と思うこともあった。
でも、よく考えると、
無理にそうなる必要はない。
必要な場面では人と話せる。
仕事では人前でプレゼンもする。
初対面の人とも仕事なら普通に話す。
人と関わること自体が嫌いなわけでもない。
ただ、ずっと人と一緒にいるより、一人の時間も必要なだけだ。
それなら、
「社交的な人間になる」
ことより、
「人と会うと疲れる自分を理解して、ちゃんと一人の時間をつくる」
方が、よほど現実的だ。
自分の性格には「取扱説明書」がある
30代になって思うのは、
自分の性格には、自分なりの「取扱説明書」があるということだ。
例えば、
疲れているときに人に会うと、さらに疲れる。
一人で考える時間があると、頭が整理される。
好きなことなら、かなり集中できる。
興味がないことは、なかなか腰が上がらない。
納得していないことを無理にやり続けると、どこかで嫌になる。
逆に、
「これは自分がやりたい」
と思ったことには、意外と粘れる。
こういうことは、何年も生きていると少しずつ分かってくる。
そして、自分の取扱説明書が分かってくると、
「なんで自分はこうなんだろう」
と悩むことが減っていく。
「ああ、今はこういう状態なんだな」
と理解できるようになる。
苦手なことを、全部克服しなくてもいい
昔は、苦手なことがあると、
「克服しなければ」
と思っていた。
人前で話すのが苦手なら、もっと練習する。
人付き合いが苦手なら、もっと人と会う。
朝が苦手なら、早起きできる人になる。
飽きっぽいなら、もっと継続力をつける。
もちろん、努力してできるようになることもある。
でも、全部を克服する必要はない。
例えば、僕がどれだけ努力しても、
「初対面の人と会った瞬間から、昔からの友達みたいに話せる人」
にはならないと思う。
そして、別になる必要もない。
その代わり、時間をかければ人と仲良くなれる。
少人数なら、じっくり話せる。
一人で考える時間があるから、仕事ではアイデアを出せる。
そう考えると、
短所だと思っていたものが、別の場所では長所になっていることもある。
自分を変えるより、環境を選ぶ
これは仕事にも似ている。
自分が苦手な環境に、無理やり自分を合わせ続けるより、
自分が力を発揮しやすい環境を選ぶ。
人と話すことが得意な人もいれば、
一人でじっくり考えることが得意な人もいる。
すぐに行動できる人もいれば、
時間をかけて考えたものを形にする人もいる。
どちらが優れているという話ではない。
自分がどんな場所で力を出しやすいのかを知っている方が、長く働くうえでは大切なのかもしれない。
自分を変えることばかり考えていると、
「今の自分ではダメだ」
という前提から始まってしまう。
でも、
「自分はこういう人間だから、どうすればうまくいくか」
と考えると、少し楽になる。
30代は「自分探し」より「自分の使い方」
20代は、自分探しの時期だったのかもしれない。
何が好きなのか。
何がしたいのか。
どんな人間になりたいのか。
どんな仕事が向いているのか。
いろいろ試してみる。
失敗してみる。
人と比べてみる。
そして少しずつ、自分の輪郭が見えてくる。
30代になると、その輪郭を無理に変えるより、
「じゃあ、この自分をどう使おうか」
と考えるようになる。
これは、少し地味だけれど、結構大きな変化だと思う。
自分の性格を変えるのではなく、
自分の性格に合った生き方を考える。
苦手を全部なくすのではなく、
苦手があっても困らない方法を考える。
そうすると、人生が少しだけ楽になる。
「このままの自分でいい」の意味
「このままの自分でいい」
という言葉は、ときどき、
「努力しなくていい」
という意味で使われる。
でも、僕が今思う「このままでいい」は、少し違う。
成長しなくていいわけではない。
新しいことをしなくていいわけでもない。
ただ、
自分を否定することを前提に、成長しなくてもいい。
ということだ。
もっと仕事ができるようになってもいい。
新しいことに挑戦してもいい。
知らない人とも話してみてもいい。
でも、それは、
「今の自分がダメだから」
ではなく、
「今の自分に、もう少しできることを増やしてみよう」
くらいでいい。
自分を変えることと、自分を否定することは、同じではない。
自分とうまく付き合う
30代になって、人生が急に分かったわけではない。
相変わらず、苦手なこともある。
面倒なこともある。
人と会いたくない日もある。
自信がなくなることもある。
でも、
「そういう自分もいるよね」
と思えるようになった。
昔は、自分を理想の形に近づけようとしていた。
今は、自分の性格を理解して、
その性格とうまく付き合いながら生きていく方が面白いと思っている。
人間は、性格を全部作り直す必要なんてない。
少し不器用なら、不器用なまま工夫すればいい。
一人が好きなら、一人の時間を大切にすればいい。
人付き合いが得意じゃないなら、少人数の関係を大切にすればいい。
慎重なら、慎重だからこそ見えるものを大切にすればいい。
自分を変えることより、
自分のことをちゃんと分かってあげる。
その方が、30代からの人生には合っているのかもしれない。
昔は「なりたい自分」を考えていた。
今は、
「この自分で、どう生きるか」
を考えている。
そして、それは少し大人になったということなのかもしれない。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉