──本質に宿る、共感されるデザインの話
はじめに
「デザイナー」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?
美しいものを描く人。オシャレでセンスがある人。
多くの人が、そんな印象を持っているかもしれません。
たしかに、視覚的に洗練されたアウトプットを生み出すこともデザイナーの仕事です。
でも、それはデザインの“表層”にすぎません。
本当に大切なのは、「なぜその形なのか」「どんな価値を届けたいのか」という、
目に見えない“意味”を考えること。
美しいものをつくるのは、いまやデザインにおける大前提であり、
そこにどんな物語を込められるかこそが、現代のデザインの問いなのです。
誰だって、かっこ悪く作りたくはない
世の中には、見た目として「ちょっと野暮ったいな」「洗練されていないな」と感じるものもあります。
ですが、それを“センスがないから”と切り捨ててしまうのは少し乱暴です。
たとえば楽天市場のようなECサイト。
情報が多すぎて雑然と見えるけれど、あの構成が一番「売れる」らしいのです。
“買いたい”という行動を促すために、あえて情報量を増やし、安心感を与えるように設計されている。
つまり、洗練さよりも、目的への最適化を優先しているのです。
リモコンにたくさんボタンがあるのも同じ。
シンプルでミニマルなデザインの方が「かっこいい」と思うかもしれませんが、
実際のユーザーの声やあらゆる世代のニーズに寄り添うと、あの形が最善だったりする。
「美しくない」のではなく、「目的と合っている」からこその選択。
デザインとは、見た目の良し悪しよりもまず、「どう役立つか」「どう届けるか」を考える行為なのです。
コンセプトが、外観をつくる
製品でもグラフィックでも、表層の美しさだけを追っているわけではありません。
たとえば日焼け止めのパッケージを考えるとします。
それを持つ人の手の大きさ、夏の陽ざしの中で手に取る一瞬、肌に触れるまでの所作──
すべてが、デザインの出発点になりえます。
「清涼感をどう伝えるか」「チープに見えず、でも軽やかに」
「使う人にとっての心地よさとは何か」
そうした小さな問いの積み重ねが、ビジュアルや質感、サイズ感に落とし込まれていきます。
そしてこれは、ただのパッケージではなく、ブランドそのものの“人格”のようなもの。
それが、「なぜこの形なのか」という理由となり、私たちの心にすっと入り込んでくるのです。
ストーリーが、共感を呼ぶ
同じような性能を持つ商品が並んだとき、私たちはどちらを選ぶでしょう?
ほとんどの場合、「なんとなく好き」と感じた方を選んでいるはずです。
その「なんとなく」を形づくるのが、“ストーリー”です。
ロゴのフォントや色味、パッケージの素材感、広告のコピー、店舗の照明──
すべてがブランドの人格を伝える言葉のように働いて、
「このブランドって、自分と感性が似ているな」と思わせてくれます。
たとえば、サステナビリティをテーマに掲げたブランドが、
彩度を抑えたトーンで、どこか静かな存在感を放っていたら、
私たちはその一貫性に「信頼」や「誠実さ」を感じ取ります。
その“感じ”は、数値では測れないけれど、確実に心に残っていくもの。
だからこそ、共感を呼ぶストーリーが、デザインには欠かせないのです。
外観は、コンセプトとストーリーの結晶
私たちの目に映る“美しいもの”の多くは、氷山のほんの一角。
その下には、数えきれない思考の積み重ねがあります。
誰のために?
いつ、どこで使われる?
どんな感情を届けたい?
それらの問いに誠実に向き合った先に、「自然なかたち」として美しい外観が現れます。
だからこそ、デザインにおいて「美しさをつくること」は当たり前の通過点であり、
むしろその奥にある“文脈”を紡ぐ力こそが、本質的な価値なのです。
SOWNのジュエリーも、そうでありたい
SOWNのジュエリーも、「ただきれいなもの」を目指しているわけではありません。
音という、目に見えない存在からインスピレーションを受け、
揺らぎや余白、波紋のような静かなエネルギーを、造形へと変換しています。
たとえば「Cicada」は、蝉の鳴き声という“儚くも強い音”をテーマにしたデザイン。
単に線の美しさを追うのではなく、その音に宿る“感情”を可視化することに挑んでいます。
身に着けた人が、言葉では説明できない感覚をふと感じ取ってくれるような、
“静かに寄り添うジュエリー”でありたい──それが、筆者の願いです。
共感から始まる、デザインの力
いま、デザインは“説得”ではなく“共感”の時代へと変化しています。
「これを選びたい」と思わせるのは、完成度の高さだけではありません。
自分の感性に寄り添ってくれること、価値観を肯定してくれること。
そうした“感覚の共鳴”が、選ばれる理由になっているのです。
SOWNも、そんな共感から始まるブランドでありたい。
声高に語らずとも、静かに自分らしさを伝えてくれるジュエリー。
それが、SOWNの目指す「意味のある美しさ」です。
まとめ
美しい外観を生み出すのは、プロであれば当然のこと。
でも、その奥にどれだけ深い問いや想いを込められるか。
それこそが、これからの時代における“真のデザイン”の力です。
SOWNは、そうした本質と丁寧に向き合いながら、
あなたの感性にそっと触れるようなジュエリーを、これからも届けていきます。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉