整えるより、揺らぐものに惹かれる

整えるより、揺らぐものに惹かれる


― 機能より、感情にふれたい

 

 

・はじめに

 

デザインの勉強をして、デザインの仕事をして、デザインが好きだと思ってきました。

でも、ふと立ち止まって振り返ると、いちばん心を動かされてきたのは「アート」の方だったかもしれない。


SOWNというブランドを立ち上げたとき、自分がつくりたいものは「デザインプロダクト」というよりも、

もっと曖昧で、もっと感覚的で、もっと“わからないけど好き”と思えるものだったと、今になって思います。


今日は、そんな「アートが好き」という気持ちについて、少し自分のことを交えて書いてみたいと思います。

 

 

 

 

 

・デザインは「役に立つ美しさ」

 

デザインには、必ず“目的”があります。

誰かに情報を届ける、モノを売る、使いやすくする。

美しいだけでは不十分で、「なぜそうなっているのか?」の説明が求められます。


構成、視線誘導、余白、タイポグラフィ、配色バランス…。

それらは論理で組み立てられていて、再現性があり、誰かの課題を解決する力があります。


でも時々、それが苦しくなる瞬間がありました。

“伝わるように整える”ことに意識を向けすぎるあまり、

本来持っていた感覚や好きの感情が薄れていってしまうような感覚です。

 

 

 

 

 

 

・アートは「理由のない美しさ」

 

一方、アートには正解がありません。

見る人の感性によって、意味が変わり、感じ方も変わります。

「なんか好き」「よくわからないけど惹かれる」

その曖昧な余白こそが、アートの魅力だと思うのです。


誰かの目を気にせず、自分だけの感情で味わえるもの。

意味がなくても、理屈がなくても、存在していいもの。


アートには、そういう自由さがあって、

人の心の奥の方にやさしく触れてくれるような力があります。

 

 

 

 

 

 

・デザインは整理、アートは混沌

 

デザインは整理された世界です。

無駄を削ぎ落とし、メッセージを明確にし、合理性を大切にする。

それはとてもスマートで、美しい仕事です。


でも、人の感情って、本来もっとグチャグチャしているものです。

理屈では説明できないことや、矛盾した気持ちを抱える瞬間だってたくさんある。


アートは、その“整理されていない部分”に寄り添ってくれる存在です。

整えるのではなく、ありのままを抱きしめてくれる。

だからこそ、疲れているとき、悩んでいるとき、ふと触れたくなるのはアートなのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

・「伝える」より「感じる」

 

デザインは“伝える”ことを目的とします。

でもアートは、“感じてもらう”ためにある。


その違いは、小さなようでいて、実はとても大きい。

デザインが目指すのは、相手にきちんと届くこと。

アートが目指すのは、相手の心を少し揺らすこと。


SOWNのプロダクトも、きっと後者でありたいと思っています。

「こう見せたい」よりも、「こう感じてもらえたらいいな」という余白のあるモノづくりを目指したい。


たとえ誰にも伝わらなかったとしても、

「自分はこれが好き」って思える感覚は、なにより大切にしていたいと思うのです。

 

 

 

 

 

・そこには"正しさ"はない

 

昔から、世界は“正しさ”や“便利さ”で作られてきました。

でもその結果、誰かが置いてけぼりになったり、心がすり減ったりしてしまうことも多い。


「社会ってこういうものだから」

「普通はこう考えるものだから」


そんな風に、“常識”という名前のフィルターを通して物事を見ると、

大切にしたい感情がどんどん失われていくような気がします。


そうやって窮屈な思いをした経験があるからこそ、

“感じること”をベースにしたアートに救われたのだと思います。


常識に照らせば冗談にしか聞こえないようなこと、

でも、それが自分にとっての真実だった。

そんな気づきを、アートは与えてくれる気がします。

 

 

 

 

 

・まとめ

 

アートは、効率的でも論理的でもない。

でも、不思議と、誰かの心の奥底に届いてしまう。


デザインの美しさも尊いけれど、

私はやっぱり、理由のない美しさに惹かれる。

揺らぎや余白のあるものに、安心感を覚える。


だからSOWNでは、機能だけじゃない“感覚”を大切にしたモノづくりを続けていきたいと思っています。

人の心に直接触れるような、そんな装いを届けていけたら。

 

 

 

 

 

 

 

それではまた明日──

 

SOWN 代表

片倉

Instagram

X (旧Twitter)

ブログに戻る
RuffRuff Apps RuffRuff Apps by Tsun