── 美しさと違和感の境界
左右対称のものを見ると、
「きれいだな」
と思う。
建物。
家具。
ロゴ。
グラフィック。
顔だってそうだ。
左右がきれいに揃っているものを見ると、
整っている感じがする。
逆に、
少し左右がズレていると、
なんとなく違和感がある。
だから、
「人は左右対称なものを美しいと感じる」
と言われることがある。
確かに、
そんな気がする。
でも、
本当にそうなのだろうか。
完璧に左右対称だと、少し怖い
例えば、人の顔。
左右がほとんど同じ顔を見ると、
「整っている」
と感じるかもしれない。
でも、
完全に左右対称にした顔を見せられると、
少し違和感を覚えることもある。
目の大きさ。
眉の高さ。
口角。
髪の流れ。
人間の顔は、
そもそも完全な左右対称ではない。
だからこそ、
完全に揃えられた瞬間、
「人間っぽさ」が少し消える。
きれいなのに、
どこか不自然。
整っているのに、
少し怖い。
この感じは、
なかなか面白い。
自然界は、意外と左右対称じゃない
自然のものを見ても、
完全な左右対称は少ない。
木の枝。
葉っぱ。
石。
雲。
波。
花びら。
大きく見れば左右が似ていても、
細かく見ると、
少しずつ違う。
同じ種類の花でも、
一枚一枚の形が違う。
海岸の波も、
二度と同じ形にはならない。
それでも、
僕たちは自然を見て、
「美しい」
と思う。
つまり、
美しさには、
必ずしも完璧な対称性が必要なわけではない。
じゃあ、なぜ左右対称は美しく見えるのか
左右対称には、
分かりやすい安心感がある。
左と右が揃っている。
上と下のバランスが取れている。
どこか安定している。
だから、
「整っている」
と感じやすいのかもしれない。
例えば、
ホテルのロビーに置かれた大きな照明。
その左右に同じ植物が置いてある。
それだけで、
なんとなく落ち着いて見える。
家具でも、
左右が揃っていると、
空間全体がきれいに見える。
対称には、
秩序がある。
そして、
人は秩序のあるものを見ると、
理解しやすい。
だから、
美しいと感じるのかもしれない。
でも、少しズレると急に面白くなる
左右対称のものに、
ほんの少しだけ違いがある。
すると、
今度は目がそこに行く。
右にはないものが、
左にだけある。
少しだけ位置がズレている。
同じ形なのに、
片方だけ少し大きい。
すると、
「なんだろう?」
と思う。
完全に揃っていたときには、
気づかなかった部分が、
急に気になり始める。
つまり、
対称は安心をつくり、ズレは興味をつくる。
そんな関係なのかもしれない。
美しいものは、少しだけ裏切ってくる
好きなデザインを思い浮かべてみる。
一見すると、
すごく整っている。
でも、
よく見ると、
どこかに少しだけ違和感がある。
ロゴの一部分だけ変わっている。
文字の配置が少しズレている。
左右で微妙に形が違う。
一見すると分からないけれど、
見つけると、
「ここ、いいな」
と思う。
そういうデザインには、
妙に惹かれることがある。
全部が完璧に揃っているものより、
「あれ?」と思う場所が一つある方が、記憶に残る。
人間も、たぶん同じ
人も、
完全に整っているから魅力的、
というわけではない。
少しクセがある。
話し方に特徴がある。
笑うときだけ表情が変わる。
左右の目の大きさが少し違う。
歩き方に特徴がある。
そういう、
「その人にしかないズレ」
が、
その人らしさになっていることがある。
もし全部が完璧に整っていたら、
それは美しいかもしれない。
でも、
少し記憶に残りにくいかもしれない。
人は、
整っているものに惹かれながら、
同時に、
整っていないものにも惹かれている。
なんだか不思議だ。
「美しい」と「違和感」は、反対ではない
美しいものを見ると、
違和感がないと思ってしまう。
でも、
実際には、
少しの違和感があるからこそ、
美しいと感じることもある。
全部が揃っている。
でも、
一箇所だけ違う。
その一箇所が、
見る人の目を止める。
「どうしてここだけ?」
と考えさせる。
その瞬間、
ただ眺めていたものが、
少しだけ面白くなる。
美しさは、
「違和感がないこと」ではなく、
違和感を心地よく感じられること
なのかもしれない。
デザインでは、あえて崩すことがある
デザインをしていると、
「整える」ことは基本的に大切だ。
余白を揃える。
文字を揃える。
大きさを揃える。
左右を揃える。
そうすると、
きれいになる。
でも、
全部を揃えて終わりではない。
あえて一つだけ崩す。
あえて余白を変える。
あえて中心から少し外す。
あえて左右を同じにしない。
そうすることで、
視線が生まれる。
リズムが生まれる。
個性が生まれる。
つまり、
整えることと、崩すことは、どちらもデザインなのだと思う。
完璧じゃないから、見続けてしまう
完璧に左右対称なものは、
一度見れば、
「きれいだな」
で終わるかもしれない。
でも、
少しだけ違うものは、
もう一度見たくなる。
「やっぱりここが違うな」
と確認する。
別の角度から見る。
近づいて見る。
そうやって、
少しずつ好きになっていく。
もしかすると、
人が「好き」と思うものの中には、
こういう小さな引っかかりが、
意外とたくさんあるのかもしれない。
美しさは、真ん中にあるのかもしれない
左右対称が美しい。
これは、
たぶん間違いではない。
整っているものには、
安心感がある。
秩序がある。
分かりやすい。
でも、
それだけではない。
少しズレているものには、
人間らしさがある。
予想外がある。
余白がある。
だから、
美しさと違和感は、
完全に反対側にあるわけではないのだと思う。
むしろ、
その間にある。
完璧に揃っているわけではない。
でも、
崩れすぎてもいない。
その、
「少しだけ違う」
というところに、
妙に惹かれる。
左右対称なものが好きなのに、
完全な左右対称には違和感を覚える。
整ったものが好きなのに、
少しクセのあるものに惹かれる。
完璧を求めながら、
完璧じゃないものを好きになる。
人の感性は、
なかなか矛盾している。
でも、
その矛盾こそが、
「美しい」と感じることなのかもしれない。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉