絶えず流れる情報の海で、心が渇いていく
スマホの画面をスクロールしていると、
自分がどこに向かっているのか、わからなくなることがあります。
次から次へと流れてくる情報。
言葉や写真を追いかけているのに、なぜか満たされない。
気づけば、何もしていないのに心が疲れている。
それは、“触れる”という感覚が置き去りにされているからかもしれません。
手ざわりが、私たちを“いま”に戻す
紙のざらつき、陶器の冷たさ、木の温もり。
そうした感触に触れると、
思考のスピードが少しだけ緩むのを感じます。
“手で感じる”という行為は、
私たちをデジタルの時間から、現実の時間へと引き戻してくれる。
たとえば、ノートにペンを走らせるとき。
タイピングよりもゆっくりなそのリズムが、
頭の中を整理してくれるような、不思議な落ち着きがある。
完璧ではないものの中に、安心がある
デジタルの世界はいつも整っていて、
余白がないほどに完璧です。
けれど、現実の世界はそうではありません。
紙の端がよれたり、コーヒーの跡がついたり、
手書きの文字が少し曲がったり。
その“不完全さ”の中に、私たちは安心を覚える。
それは、生きているものだけが持つゆらぎ。
アナログな時間が、感情の輪郭を取り戻す
手で触れられるものに向き合うと、
自分の感情が少しずつ輪郭を持ちはじめます。
画面の向こうでは流されてしまうような、
微妙な寂しさや、嬉しさや、懐かしさ。
それらを感じ取れるようになるのは、
“触れる時間”があるから。
手ざわりは、感情を思い出すためのスイッチなのです。
“触れる”ことで、感性は再生する
デジタルの便利さは素晴らしいけれど、
すべてをそれに委ねると、
世界の豊かさを取りこぼしてしまう気がします。
だからときどき、
スマホを伏せて、指先に世界を戻してみる。
本の紙をめくる。
服の質感を確かめる。
ペンを持って、文字を書く。
その瞬間、
静かに“自分の感性”が戻ってくる。
デジタルに疲れたら、
手ざわりのある時間の中で、
もう一度、世界と出会い直してみてください。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉
