個人で働くことへの憧れ
正直に言えば、私はもともと人と関わることが苦手でした。
誰かと一緒に作業するより、一人で集中して取り組む方が気楽に思えたし、すべてを自分で決められる自由さに憧れていました。
だから、「個人事業主」という働き方に、長いあいだ夢を抱いていたのです。
ですが、実際に社会に出て会社で働くと、現実は思っていたよりも複雑でした。
大きな仕事を進めるには、自分ひとりではどうにもならない場面が必ず訪れます。
そのたびに、人と関わることから逃げるか、向き合うか――選択を迫られました。
私は、小さな一歩から始めることにしました。
休憩中に雑談をしてみる。困っている同僚に声をかける。
自分の得意な部分を少しだけシェアしてみる。
最初はぎこちなくても、続けるうちに人との距離がほんの少しずつ縮まっていくのを感じました。
プロジェクトを動かす「人の力」
最近、強く思うのは「プロジェクトは人によって動かされている」ということです。
以前は、プロジェクトそのものの内容やテーマに重きを置いていました。
面白い仕事かどうか、やりたい領域かどうか。それがすべてだと思っていたのです。
けれど実際に経験を積んでみると、仕事の楽しさを決めるのは“内容”ではなく“メンバー”であることに気づきました。
自分が思いつかないアイデアを誰かが提示してくれる瞬間。
互いの弱みを補い合いながら前進していく感覚。
そして、プロジェクトの山場を一緒に乗り越えたときの連帯感。こ
れらは、一人で仕事をしていたら絶対に得られないものです。
そう思えるようになってから、仕事の景色が変わりました。
成果や効率だけでは測れない「人と共に進む楽しさ」が、日々の中に確かに存在しているのです。
競争から共創へ
デザイナーやクリエイターの世界に身を置いていると、「自分が一番だ」と思わなければやっていけない、という空気があります。
同じプロジェクトを進める仲間であっても、心の奥ではライバル意識が常に渦巻いていました。
自分の作品にプライドを持ち、誰よりも評価されたい。
そんな気持ちが強ければ強いほど、周りは「敵」に見えてしまうものです。
しかし30代を越えた今、その感覚は少しずつ変わり始めています。
もちろん、プライドや競争心が消えたわけではありません。
けれど、それ以上に「仲間と一緒に良いものを作りたい」という気持ちの方が勝るようになったのです。
自分だけが評価されることよりも、チーム全体で成功することの方が、心から嬉しい。
以前の私なら想像もできなかった変化です。
もしかすると、それは「成熟」と呼べるものなのかもしれません。
会社で仕事を楽しむコツ
会社員である以上、すべての仕事が自分の望むものとは限りません。
ときには理不尽さを感じたり、無駄に思えるタスクに追われたりもします。
けれど、その中で「誰と働くか」に意識を向けるだけで、不思議と心の持ちようは変わります。
気の合うメンバーと一緒にいると、重たいタスクも少し軽くなる。
苦しい局面も「一緒に乗り越えよう」という気持ちが生まれる。
結局、会社で仕事を楽しむコツは、「一人で抱え込まず、仲間と関わること」に尽きるのだと思います。
仕事は内容だけではなく、人間関係によって彩られる。
そう考えると、チームで働くことの価値は、単なる効率や役割分担を超えて、人の心そのものを支えるものなのかもしれません。
私が気づいたこと
昔は「一人で完結する強さ」を追い求めていました。
けれど今は、「人と共に歩む楽しさ」が心を支えてくれていると感じます。
もしかすると私は、ずっと昔から人と関わることを求めていたのかもしれません。
ただ、それを受け止められるようになるまでに、時間がかかっただけなのです。
そして今、ようやく気づきました。
――チームで仕事するのは、案外、悪くないどころか、とても楽しいことなのかもしれない。
れではまた明日──
SOWN 代表
片倉