■はじめに
みなさんは、“今”を大切に生きていますか?
将来のためにスキルを身につけること。お金を貯めること。人脈を広げること。
人生の多くの選択が「未来のため」に設計されている中で、ふとこんな疑問が浮かびます。
「それって、今の自分が本当に楽しいと感じていることなのか?」
この記事では、「コンサマトリー」という社会学の概念を軸に、
“今この瞬間”をどう大切にするかについて考えてみます。
■コンサマトリーとインストゥルメンタル
聞きなれない言葉かもしれませんが、「コンサマトリー(consummatory)」は社会学の概念です。
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コンサマトリー:行為それ自体が目的になっていること
→「楽しいからやっている」「好きだからやっている」状態。
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インストゥルメンタル(instrumental):目的達成のための“手段”として行動すること
→「◯◯になるためにやる」「成功するためにやる」状態。
たとえば、楽器を弾くのが楽しくて毎日ギターを触っている人はコンサマトリー。
一方で、「ミュージシャンになりたいから練習している」というのはインストゥルメンタルです。
どちらが良い・悪いではありませんが、長く心地よく続けられるのはコンサマトリーな行為です。
■「努力」は「好き」を超えられない
たとえば、イラストレーターを目指す2人がいるとします。
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絵が大好きで、誰に言われなくても毎日描いている人
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将来イラストレーターになるために、専門学校で努力している人
2番の人も素晴らしいですが、「努力で追いつけない好きの力」があるのも事実です。
なぜなら、“好き”で描いている人は、描くこと自体が報酬になっているからです。
疲れても、うまくいかなくても、描くことが「やめたくないこと」になっている。
努力は素晴らしいですが、どこかで限界がくる。
でも、楽しんでやっている人は、限界の向こう側に行けるのです。
■「今を楽しまなきゃ、自分が可哀想」
筆者も昔、デザインを学ぶ大学に通っていました。
最初は、作ることそのものが楽しくて仕方なかった。
夜中まで夢中で作っていても、疲れを感じなかった。
でも、だんだん「評価されるため」「就職のため」「成果のため」という目的意識が前に出てくるようになると、
創作が「義務」になり、苦しさが増してきました。
創作自体が楽しかったはずなのに、インストゥルメンタルな思考が入りこむことで、
喜びよりも焦りが先に立つようになってしまったのです。
■今は、コンサマトリーに生きている
現在、本業である腕時計のデザインや、SOWNのジュエリーブランドの活動など、
どれも「自分がやりたいからやっている」ことばかりです。
もちろん、ビジネスとして成り立たせる難しさはあります。
でも、誰に言われたわけでもなく、自分の意志で始め、自分の感性で続けている。
この状態が、とても心地よく、幸せだと感じます。
■一時的なインストゥルメンタルも、必要なときがある
誤解しないでほしいのは、「インストゥルメンタルな努力がすべて悪」というわけではありません。
たとえば、受験勉強や資格取得、基礎トレーニングなど、
**“将来の自由度を広げるための一時的な投資”**として必要な努力も確かに存在します。
むしろ、インストゥルメンタルな努力によって選択肢が広がり、
そのあとに“コンサマトリー的な道”を選べるようになることも多いです。
■日々の選択を「コンサマトリー」で決めてみる
大きな選択だけでなく、日常の小さな行動でも「コンサマトリー的」かどうかを意識してみると、
生活に“温度”が生まれます。
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美容院:カットだけでなく「その時間そのものが心地よいか」
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カフェ:味も大事だけど、「空間として居心地がいいか」
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趣味:スキルアップじゃなくて、「今日楽しかったか」
そうやって、目の前の“今”を楽しむ判断軸を持つことで、
自分の人生がどんどん“自分のもの”になっていきます。
■まとめ
「将来のために今を犠牲にする」人生は、なんだかもったいない。
努力や目標ももちろん大切だけど、
“今この瞬間に夢中になれているか”という感覚は、それ以上に人生を豊かにしてくれます。
自分がやりたいからやる。楽しいから続ける。
そんな「コンサマトリー的な生き方」を、少しずつ意識してみませんか?
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉