今日は、少し自分のことを書いてみようと思います。
最近、本職である腕時計のデザインに、強いやりがいを感じています。
4年前までは別の会社でスマートフォンのデザインをしていましたが、「身につけるもの」をデザインする仕事は、想像以上に楽しい。
もともと、腕時計に強いこだわりがあったわけではありません。
だからこそ、プロダクトデザインの仕事をする上で、
自分は、どんなプロダクトにいちばん心が動くのだろう?
そんな問いを、ずっと考えてきました。
プロダクト好きの関心領域
プロダクトデザインが好きな人は、家電、ガジェット、車、インテリア、建築など、幅広い分野に興味を持っていることが多いと思います。
造形、色、質感、素材——それらに共通する感覚があるからです。
一方で、正直に言うと、私はガジェットやカーデザイン、インテリアデザインに、強い関心を持てるタイプではありません。
仕事として触れることはあっても、プライベートで深くのめり込むことは少ない。
では、何に惹かれるのか。
それが、腕時計、ジュエリー、靴などの「身に纏うアイテム」でした。
他者に見られる前提のプロダクト
なぜ、身につけるプロダクトなのか。
理由はシンプルで、コミュニケーションを生むからです。
家電やインテリアも、来客があれば他者の目に触れます。
ただ、その機会は限られています。
車も、街中を走ってはいますが、運転中はほぼ個人の空間です。
そこから会話が生まれることは、そう多くありません。
一方で、腕時計やジュエリー、靴は違います。
それらは、自分の感性や気分を外に向かって表現するものであり、
他者の視点があって初めて成立するプロダクトです。
会話が立ち上がる瞬間
「その時計、かっこいいですね」
「そのピアス、すごく可愛い」
「そのスニーカー、似合ってますね」
そんな一言から、会話が生まれます。
「これは〇〇の時計で…」
「このピアスはプレゼントでもらったんです」
「このスニーカー、今すごく流行っていて…」
プロダクトがきっかけとなり、人と人のあいだに言葉が流れ始める。
つまり、これらは
他者に観測されることで意味を持つ、コミュニケーションの媒体
なのだと思います。
もし世界に自分ひとりしかいなかったら
もちろん、誰にも見せるつもりはなく、純粋に自分のために身につける人もいるでしょう。
でも、もしこの世界に自分ひとりしかいなかったら——
果たして、人は腕時計やジュエリーを身につけるでしょうか。
時間を知るだけなら、もっと合理的な手段があります。 装飾品も、誰かに見られなければ意味を失います。
それでも身につけるとしたら、それはもう「自己表現」ではなく、別の何かです。
この仕事が好きな理由
私は今、そんなプロダクトのデザインを仕事にしています。
人と人のあいだに、ほんの小さな会話を生むための形を考えること。
それが自分の仕事であり、 それにやりがいを感じられていることを、 とても幸せだと思っています。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉