三菱一号館美術館で開催されている
「アールデコとモード展」に行ってきました。
アールデコは、直線と幾何学を基調とした、シャープで洗練されたデザイン様式。
装飾は豊かでありながら、どこか機能的でモダン。今の私たちが「かっこいい」と感じる感性の源流を感じさせるスタイルです。
展示を見ながら思ったのは、アールデコは単なる「デザイン」ではなく、
“女性の生き方を変えたムーブメント”だったということ。
■ コルセットが当たり前だった時代
当時の女性たちのファッションは、コルセットで極端にウエストを絞り、体を“理想の形”に合わせるものでした。
美しさのために、苦しさを受け入れることが当たり前。
動きにくく、息苦しく、それでも「女性らしさ」のために着続けるしかない時代。
展示でも、細くくびれたシルエットのドレスが多く並んでおり、
その背景には、社会の価値観そのものが刻まれているように感じました。

■ シャネルがもたらした「自由」という革命
そんな時代に現れたのがココ・シャネル。
彼女は、女性の体を締め付けるコルセットを否定し、
**“女性が自分らしく動ける服”**を世の中に提示しました。
・身体を拘束しないシルエット
・軽やかに動ける素材
・シンプルで機能的なライン
展示を見ていると、シャネルの提案は、単なる“デザインの刷新”ではなく、
女性の価値観そのものを解放した出来事だったことが伝わってきます。
今では当たり前の「着心地」や「動きやすさ」という感覚。
でもその当たり前は、誰かが既存の美のルールを壊した結果、手に入った自由なのだと気づかされます。
■ アールデコの魅力は“自由な線”にある
今回の展示のドレスやアクセサリーを見ていて印象的だったのは、
“直線と曲線の美しさ”がすべてに息づいていること。
直線は意志やモダンさ、
曲線はしなやかさや生命力。
シャネルを含む当時のデザイナーたちは、
この「線」を使って、女性たちの新しい生き方を描いていたのかもしれません。
美しさは、形だけではなく、
生き方そのものをデザインする力を持っている。
展示を歩きながら、そんなことを強く感じました。

■ 今のファッションは、自由の歴史の上に立っている
私たちが今日、好きな服を選び、
好きなシルエットで、好きな生き方を選べるのは、
こうした“価値観の解放”の積み重ねがあったから。
「アールデコとモード展」は
過去のファッションを見に行く場ではなく、
“いま普通にしていることが、どれだけ革命の結果なのか”
を体感できる展示でした。
ファッションはただ着るだけのものではなく、
その時代の「自由の形」を映し出す鏡なのだと、改めて感じさせられます。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉