はじめに
「こんな自分じゃ、ダメかもしれない」
「どうしてあの人みたいに、堂々とできないんだろう」
誰にも言えないまま、心の奥に抱え続けるコンプレックス。
見た目のこと、性格のこと、家庭環境、学歴、話し方……。
“自分が嫌いな自分”を、なかったことにしようとすればするほど、
余計にその輪郭はくっきりと浮かび上がってきます。
でも、それは本当に「なくす」べきものなのでしょうか。
今回は、“コンプレックスとの向き合い方”をテーマに、
静かに、でも深く考えてみたいと思います。
「気にしすぎている自分」に気づく
私たちの多くは、自分の“欠け”を周囲よりも何倍も大きく感じています。
たとえば、他人の目線が気になって仕方がないのは、
「気にされている」からではなく、
「気にしているのは自分だけ」だからかもしれません。
人は他人にそこまで興味がないという現実は、
残酷であると同時に、少しだけ救いでもあります。
まずは、「気にしているのは自分自身」という事実に気づくこと。
そこから少しずつ、心は軽くなっていきます。
コンプレックスは、強みの“源泉”になる
一見、短所や欠点に見えるものほど、
深く掘っていくと、その人だけの“資源”になります。
たとえば、内向的な性格を「社交性がない」と否定するのではなく、
「静かに物事を考えられる人」「相手の話を深く聴ける人」と捉え直してみる。
あるいは、家庭環境に悩んできた人が、
同じような境遇の誰かに寄り添える力を持っていたりもします。
“好き”は表面にあるけど、
“強み”は、コンプレックスのすぐそばにある。
それを見つけるには、誰かのまねではなく、
自分の奥行きと丁寧に向き合う時間が必要です。
その「欠け」があるから、優しくなれる
コンプレックスを「なくす」ことばかりに目を向けてしまうと、
私たちは、どこか自分を雑に扱ってしまいます。
「こんな自分ではダメ」
「早く変わらなくては」
そう焦るほど、自分への信頼は失われていく。
でも、そもそも誰かの弱さに寄り添える人というのは、
自分の中に“痛み”を知っている人なのだと思います。
コンプレックスがあるということは、
他人の欠けにも気づけるということ。
その優しさは、簡単に手に入るものではありません。
焦らなくて大丈夫。
むしろ、今のままのあなたにしか、出せない光があるはずです。
誰かの物差しを、そっと手放す
「こうあるべき」「あの人のように」
そうした他人の基準を無意識に背負い続けていると、
自分の“凸凹”はどこまでも不完全に見えてしまいます。
でも、世界に“完璧な形”など存在しません。
個性は“ゆらぎ”の中に宿ります。
あなたにしかない線、あなたにしかない形。
そのままの形を“好き”にならなくてもいい。
まずは、「これが自分の今の輪郭なんだ」と、
そっと受け入れてあげることから始めてみましょう。
自分との対話を、やめない
コンプレックスを消そうとするよりも、
それと静かに共存していく生き方を選ぶ方が、
ずっと自然で、美しいと私は思います。
日々の中で、自分の気持ちを言葉にしてみる。
今日、どんなことで傷つき、何にホッとしたのか。
そうした小さな対話を積み重ねていくことが、
コンプレックスと向き合うための土台になっていきます。
美しさとは、すべてを“満たす”ことではなく、
欠けを含めて“調和”させること。
あなたのコンプレックスが、
あなたらしさに変わる日が、必ず来ます。
まとめ
「コンプレックスをなくす」──それは、
“ないこと”を目指すのではなく、
“あるもの”をそのまま抱きしめること。
むしろ、その「欠け」があるからこそ、
人は繊細で、美しく、優しくなれるのだと私は思います。
他人の正解ではなく、自分だけのペースで。
欠けを恐れず、丁寧に歩いていけますように。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉