洋服は、生きていくために必要なものです。
寒さや暑さから身体を守り、社会的な場面では礼儀として身を整える。
その最低限の役割を果たすだけなら、「おしゃれ」である必要はありません。
けれど、私たちはなぜ毎朝、ほんの少し時間をかけて服を選び、色や形を吟味し、時には新しい服を買い足すのでしょうか。
なぜ「ただ着る」だけではなく、「おしゃれをする」ことにこだわるのでしょうか。
仕事の日に選ぶ一枚
例えば、仕事の日。
プレゼンの日や大事な会議の日、無意識のうちに“勝負服”のような一着を選んでしまうことがあります。
それは単なる布ではなく、「私はできる」という自分へのお守りのような存在。
服は言葉を発さなくても、私たちの自信をそっと後押ししてくれるのです。
誰かと会う日のワクワク
誰かと会う日。
友人や恋人との約束の前に、少し時間をかけて鏡に向かう。
「これを着たら喜んでくれるかな」そんな気持ちが服選びににじみ出る。
おしゃれは、自己表現であると同時に、他者へのささやかなギフトでもあるのだと思います。
ひとりで過ごす休日に
そして、誰にも会わない休日。
部屋で過ごすだけなのに、少し気に入った服を着ることがあります。
誰に見せるわけでもないのに、なぜか心が軽くなる。
服は、外に見せるための道具である以上に、自分の気持ちを整える“儀式”でもあるのでしょう。
人類の歴史から見る「おしゃれ」
実は「おしゃれ」は、とても古い営みです。
洞窟に暮らしていた時代から、人類は石や骨で装飾品をつくり、身体にまとっていました。
それは生きるために必須ではないけれど、仲間とつながる印であり、祈りや願いを込めるための行為でもありました。
服や装飾は、ただの“実用品”ではなく、人が「自分らしさを示す」ための道具として進化してきたのです。
つまり、おしゃれは人間の歴史に深く根づいた、感性と文化の証ともいえます。
おしゃれの本当の意味
おしゃれは、生きるためには不要かもしれません。
でも、心を生かすためには、きっと大切なもの。
お気に入りの服を纏った瞬間に背筋が伸びるあの感覚、色や形に宿る小さな勇気──。
それは合理性では説明できない、人生をほんの少し「生きやすくする力」なのです。
だから、もし「おしゃれに意味なんてあるの?」と問われたら、こう答えたい。
──生きるためには必要ない。けれど、心を豊かにするために必要なのだと。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉