自分の絵は折るな

自分の絵は折るな

 

── 自分が作ったものを、自分で大切にする

美術予備校に通っていた頃のことを、

ふと思い出すことがあります。

同じコースを受講していた学生が、

自分で描いたデッサンを折り曲げて、

持ち帰ろうとしていました。

すると、

予備校の先生が、

ものすごく怒っていました。

「絵を折るな」

と。

当時の私は、

正直、

そこまで怒ることなのかな、

と思っていました。






たかがデッサン

 

美術予備校に通い始めた頃なんて、

みんな絵が上手いわけではありません。

むしろ、

最初はかなり下手です。

形が取れない。

陰影もおかしい。

構図も悪い。

自分で見ても、

「全然うまく描けていないな」

と思う。

そんな絵を、

わざわざ大切に保管する必要があるのか。

当時は、

そんな感覚だったのだと思います。

だから、

折って持って帰ったって、

別にいいじゃないか。

そう思っていました。






でも、今なら少し分かる

 

今になって考えると、

あの先生が怒った理由は、

「紙を折るな」

というだけではなかったのだと思います。

自分の作品を、大切に扱ってほしい。

そういうことだったのではないでしょうか。

上手いか下手かは、

関係ない。

完成度も関係ない。

それは、

自分が時間を使って、

自分の手で作ったものです。

だったら、

どんなに未熟でも、

自分で雑に扱ってはいけない。




 


下手な時ほど、大切にする

 

これは、

結構大事なことだと思います。

上手く描けるようになって、

先生から褒められるようになったら、

作品を大切にするのは簡単です。

「これは自分の代表作だ」

と思えるから。

でも、

下手な頃はそうはいきません。

「こんなもの、

別にどうでもいい」

と思ってしまう。

だからこそ、

自分が作ったものを大切にすることには、

意味があるのだと思います。






社会人になっても、「折りたくなる」瞬間がある

 

そして、

これは社会人になってからも、

意外と同じなのかもしれません。

自分が一生懸命考えた提案。

時間をかけて作った資料。

自分なりに考え抜いたアイデア。

それを、

誰かに真っ向から否定される。

「全然違う」

「これは良くない」

「やり直して」

と言われる。

そんなことが続くと、

だんだん、

「もうどうでもいいや」

と思ってしまう。

自分で考えたものを、

自分で投げ出したくなる。






「自分の絵は折らない」

 

そんな時に、

あの予備校の先生のことを思い出します。

自分の絵は折らない。

つまり、

自分が一生懸命考えたものを、

自分自身で粗末に扱わない。

誰かに否定されたからといって、

「自分の考えには価値がない」

と決めつけない。

もちろん、

間違っていることもあります。

改善した方がいいこともあります。

人からの意見を聞いて、

考えを変えることも大切です。

でも、

「否定された」

と、

「価値がない」

は、

同じではありません。



 



捨てるかどうかは、自分で決める

 

仕事では、

自分のアイデアを手放さなければならないことがあります。

会社の方針と合わない。

予算がない。

スケジュール的に難しい。

ユーザーにとって良くない。

そういう理由なら、

潔く捨てればいい。

でも、

誰かに否定されたからという理由だけで、

「こんな考え、どうでもいい」

と自分から捨ててしまうのは、

少し違う気がします。

自分の考えを捨てるかどうかは、

最後は自分で決めればいい。

 

 

 

美術予備校で、

先生に怒られていたあの時は、

その意味が分かりませんでした。

でも、

今になってみると、

あれは絵の扱い方を教えていたのではなく、

「自分が作ったものを、自分で大切にする」

ということを教えてくれていたのかもしれません。

どんなに下手でも、

自分の絵。

どんなに未熟でも、

自分の作品。

どんなに否定されても、

自分が考えたアイデア。

だから、

簡単に折らない。

簡単に捨てない。

必要なら、

直せばいい。

描き直せばいい。

作り直せばいい。

でも、

自分で自分の作品を粗末にしない。

それだけは、

忘れないようにしたいと思います。

自分の絵は、折らない。

 

 

 

 

 

それではまた明日──

 

SOWN 代表

片倉

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