正しさは“理解”が必要。美しさは“理解が不要”
たとえば、
「これは使いやすい」「これは合理的だ」という“正しさ”は、言語や説明を通して理解する必要があります。
でも
美しさは、説明の前に伝わる。
音の響き、色の美しさ、形の調和。
それらは脳の「直感・快」の領域で処理され、
0.2秒以内に“好き・嫌い・気になる”が決まると言われています。
つまり美しさは、
思考より先に、感情に届くもの。
これが、正しさより速い理由です。
脳は“生き延びるため”に、美しさを優先している
少し意外かもしれませんが、
美しさに反応するのは、進化の名残でもあります。
・整った顔 → 健康の証
・規則的な形 → 安全の兆候
・心地よい音 → 危険のない環境
人類は直感的に判断する必要があり、
美しさ=安心につながるシグナルでした。
形が整っているだけで好意を抱き、
柔らかい色を見るだけで落ち着く。
これは本能であり、“説明”を必要としない反応なのです。
“説明できないけど惹かれる”は、最強の魅力
仕事でも、デザインでも、人間関係でも、
「なんでかわからないけど好き」という要素は強い。
そこには必ず、
感覚のスピードで伝わる何かがあります。
反対に、どれだけ正しくても、
・論理的だけど惹かれない
・機能的だけど心が動かない
ということもよくあります。
人が動くときは、
正しさより、感情に火がついたかどうかで決まるからです。
デザインは“正しさ×美しさ”を結びつけたときに強くなる
多くのプロダクトが難しいのは、
正しさ(機能)と、美しさ(感性)だけでは足りないからです。
重要なのは、
正しさと美しさが矛盾せず、同じ方向を向いていること。
AppleやDysonもそうですが、
“機能的で美しい”ものは、説明がなくても欲しくなる。
人の認知構造に沿っているからです。
美しさを感じる力は、人生を豊かにする
美しさは、ほんの一瞬で心に届きます。
・朝の光の角度
・お気に入りの服のシルエット
・香りの残り方
・音の余韻
こういった“説明のいらない感覚”こそ、
日常を豊かにしてくれるものです。
正しさの世界に生きていると、見落としがちですが、
私たちを動かしているのはいつだって感性です。
そして、美しさをキャッチできる感性は、
人生をゆっくりと、しかし確実に豊かにしてくれます。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉