みなさんは、日常の中で「フォント」に目を留めたことはありますか?
街を歩いていて、ふと惹かれるショップのロゴ。
ブランドの世界観を一目で語ってくれるような、洗練された文字たち。
その一つひとつは、単なる“文字”ではありません。
フォントは、静かに、けれど確かに「そのブランドらしさ」や「空気感」を形づくっているのです。
今回は、美しいと評され、数多くのブランドに愛されてきた欧文フォントを5つご紹介します。
欧文フォントの基本:セリフ体とサンセリフ体
まず押さえておきたいのが、欧文書体の大まかな分類。
● セリフ体(ローマン体)
日本語で言えば「明朝体」のような存在。
文字の端に“セリフ”と呼ばれる小さな装飾があり、線に抑揚があります。
クラシックで品格のある印象を与えます。
● サンセリフ体
“セリフ(装飾)”がなく、線幅も均一な書体。
日本語でいうと「ゴシック体」に近いです。
シンプルでモダン、ミニマルな印象をつくります。
1. Helvetica(ヘルベチカ)
世界中で最も使われていると言っても過言ではない、超定番のサンセリフ体。
「中立」「合理性」「普遍性」を体現するような、完璧に調整されたバランスが魅力です。
Helveticaとは、ラテン語で「スイスの」という意味。
スイスデザインの精神をそのまま体現したような書体です。
使用ブランド:
Panasonic/OLYMPUS/Francfranc/FENDI/BMW/SAINT LAURENT など
2. Futura(フーツラ)
幾何学の美しさを取り込んだ、先進的なサンセリフ体。
真円に近い「O」や、角ばった直線的な字形が特徴。
20世紀初頭のモダニズムの潮流をくむフォント。
どこかレトロ・フューチャーな表情も。
使用ブランド:
LOUIS VUITTON/Supreme/GU/Calvin Klein/OMEGA/DOLCE & GABBANA
3. Didot(ディド)
繊細で気品あるローマン体。
ファッション誌やラグジュアリーブランドで定番の書体で、
コントラストの強い線が、女性らしい華やかさを演出します。
“知的で、少しドラマティック”。
そんな女性像を想起させるフォントです。
使用ブランド:
DIOR/VOGUE/ZARA/ARMANI/ELLE
4. Gill Sans(ギル・サン)
太めの線幅と、丸みを帯びたシルエットが特徴のサンセリフ体。
力強さと親しみやすさを両立させたようなデザイン。
“イギリスのHelvetica”とも称されます。
使用ブランド:
Margaret Howell/TOMMY HILFIGER/TAG Heuer/ROLLS ROYCE
5. Optima(オプティマ)
サンセリフ体でありながら、ローマン体のような抑揚を持つ、稀有な存在。
セリフがないためシンプルで可読性が高い。
ラインには柔らかく優雅なカーブがあり
静かに漂うエレガンスを宿しています。
使用ブランド:
Aesop/LUMINE/GODIVA/MAZDA/ASTON MARTIN
SOWNのロゴフォント
ちなみに、当ブランド SOWN のロゴも、上記の Optima を使用しています。
ブランド立ち上げの際、無数のフォントを比較検討しましたが、
このフォントには、“感性のゆらぎ”と“静かな強さ”の両方が宿っていました。
どこか中性的で、でも個性がある。
繊細だけれど、芯がある。
まさに、SOWNの掲げる世界観──
音をかたちにする。過去と未来をつなぐ感性
にふさわしいと感じました。
まとめ:フォントは「無言のメッセージ」
今回は、とてもマニアックな内容を紹介してみました。
フォントは、ロゴだけではありません。
Webサイト、商品パッケージ、広告、プレゼン資料…。
その選び方ひとつで、伝わる印象は驚くほど変わります。
静かだけど、確実に。
フォントは、ブランドの「声」なのです。
ぜひ次に街を歩くとき、
あらゆる「文字のかたち」に、少しだけ目をとめてみてください。
そこには、きっと“見えない美意識”が宿っています。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉