「自分らしさ」って、なんだろう。
誰かに評価されたい。でも本音では、自分の“好き”を貫きたい。
そんな相反する気持ちのあいだで、私たちは日々、迷いながらも「何かを選び」「何かを表現」しながら生きています。
漫画『ブルーピリオド』は、美術に目覚めた高校生が、美大を目指して奮闘する物語。そこには、迷い、恐れ、衝動、孤独、そして希望が、登場人物たちの言葉として丁寧に描かれています。
この記事では、ブルーピリオドの名言を5つ取り上げながら、「選択すること」「自分らしくあること」について、SOWNらしい感性で紐解いていきます。
1. 「好きなことは趣味でいい」これは大人の発想だと思いますよ
(佐伯昌子 / 第1巻)
「やりたいこと」と「やるべきこと」は、どこで分けられてしまったのか?
この言葉は、進路に迷う主人公に先生がかけたひと言。けれど、これは進路選択だけではなく、社会人になってからもずっとついて回る問題です。
“好き”を選ぶことに、後ろめたさを感じた経験はありませんか?
「稼げないかもしれない」「時間の無駄になるかも」「大人として無責任かも」――そんな声が、頭の中でリピートする。
でも、私たちの人生は本当に、合理性と効率だけで測っていいものでしょうか?
もし“好き”なことに費やす時間が、自分の心を救い、他人との違いを育み、やがて新しい価値に繋がるのだとしたら?
趣味にとどめるには、少しもったいないのかもしれません。
2. 世間が良いっていうものにならなきゃいけないなら俺は死ぬ
(鮎川龍二 / 第2巻)
「自分らしくあること」と「誰かに受け入れられること」──あなたは、どちらを選びますか?
主人公の友人、ユカちゃん(鮎川龍二)は、男性だけど女性的な服装をし、繊細で可愛いものが好き。それを隠すことなく、貫いています。
けれど、現実ではどうでしょう?
職場の空気、SNSの反応、家族の期待──私たちは日々“普通”に合わせようとしています。
「本当はこうしたいけど…」と自分を抑えるそのたびに、少しずつ「私らしさ」が削がれていく。
ユカちゃんの言葉は、そんな私たちに静かに問いかけます。
“受け入れられるために自分を変える”のではなく、“変わらないままでも価値がある”と信じる勇気。
その一歩が、他人との違いを誇れる感性につながっていくのかもしれません。
3. 楽しんで作って、それ否定されたら、立てなくなりそうで怖いんだよ…!
(矢口八虎 / 第4巻)
「好きなこと」を発信することは、なぜこんなにも怖いのでしょうか?
主人公が、絵の表現に戸惑い、自分の表現したいことに向き合えていない現状を友人に漏らすシーンです。
クリエイティブなことをしている人だけでなく、SNSでの投稿、仕事での企画提案、誰かへの相談など…
「自分の内側」を表に出す場面は意外と多いですよね。
このセリフは、そんな内側をさらけ出したい気持ちと、「否定されたらどうしよう」という恐れの間で揺れる葛藤を表しています。
でも、その「怖さ」を知っているからこそ、誰かの挑戦に優しくなれるし、誰かの作品に感動できるのかもしれません。
私たちの表現は、正しさや完璧さではなく、「正直さ」によって誰かの心を動かすのだと思います。
4. 私の全部をギブしないと みんな私の作品見ないもん
(猫屋敷あも / 第9巻)
何かを届けたいとき、「そこにあなた自身はちゃんと込められていますか?」
芸大の教授である猫屋敷先生のセリフ。
現代は発信の時代。SNSでも仕事でも、何かを「届ける」ことが求められる場面が増えました。
でもただ“情報”を並べても、人の心は動きません。
“正しい”だけでは、“欲しい”にはならない。
猫屋敷先生のこの言葉は、感情も痛みも願いも、全部を込めて初めて、何かが伝わることを教えてくれます。
“ギブ”とは、自分の全部を注ぎ込むこと。
それはときに疲れるけれど、同時に、唯一無二の信頼や共鳴を生み出してくれる道でもあります。
5. 俺はねぇ、自分が納得できる地獄を選んだだけだよ
(蝶野先生 / 第16巻)
どの道を選択しても、悲しいこと、辛いことはある
主人公が、芸大の教授に「なぜ作家の道を選んだのか」と聞いた時の教授の回答です。
蝶野先生は、厳しい芸術の世界で生きることを、自分の意思で選びました。
それは苦労も多いけれど、誰かに強いられたものではないからこそ、続けられる。
私たちの人生にも、避けがたい苦労や悩みはつきものです。
でも、誰かに決められた“正しさ”の中で苦しむよりも、「それでも私はこの道がいい」と選んだ道の方が、よほど心が納得する。
失敗しても、後悔しても、「選んだのは自分だ」と言えることは、何よりも強さになる。
そんな生き方を、私たちはもっと誇ってもいいのではないでしょうか。
まとめ:迷いは、あなたの中に「軸」がある証拠
ブルーピリオドの名言たちは、まるで静かな手紙のように、読む人それぞれに語りかけてきます。
・やりたいことに素直になれているか
・自分の感性を信じられているか
・誰かの“正解”より、自分の“納得”を選べているか
正解のない時代に、迷いながら、それでも進もうとするあなたへ。
その迷いの中にこそ、自分だけの輪郭が隠れているのではないでしょうか。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉