── 状態を言語化する難しさ
感情と会話のズレ。
一番よく聞くのに、一番困る質問
「最近どう?」
久しぶりに会った人、仕事の打ち合わせ、ちょっとした雑談。
この質問は、ほぼ反射的に投げかけられます。
でも、聞かれた側は一瞬だけ、言葉に詰まる。
悪くはない。でも、特別よくもない。
説明するほどの出来事はないけれど、「順調です」と言うほど軽くもない。
この質問が答えにくいのは、気分が悪いからではなく、
状態そのものが、言葉にしづらいものだからなのかもしれません。
「最近どう?」は、感情ではなく“状態”を聞いている
「楽しい?」「元気?」なら、まだ答えやすい。
でも「最近どう?」は、感情ではなく、生活全体・心の流れ・調子をまとめて聞いてきます。
・仕事
・人間関係
・体調
・気分
・将来の不安
これらを一言でまとめるのは、そもそも無理があります。
私たちは日々、
はっきりとした感情よりも、グラデーションの状態で生きていることが多いのです。
正直に答えると、会話が重くなる気がする
もうひとつの理由は、空気です。
「最近どう?」に対して、
「実はちょっとしんどくて」と答えると、
場のトーンが変わってしまいそうな気がする。
相手を困らせたくない。
深い話をするほどの関係性かも分からない。
だから多くの場合、
「まあ、ぼちぼちです」
「変わらずですね」
という、無難な言葉を選びます。
これは嘘ではなく、会話としてちょうどいい距離感を選んでいるだけです。
言葉にできない状態も、ちゃんと存在している
問題は、「言語化できない=何も感じていない」と思ってしまうこと。
実際には、
・なんとなく疲れている
・少し立ち止まりたい
・静かに前に進んでいる
そんな曖昧だけど確かな状態が、確かにある。
ただ、それに名前がついていないだけ。
「最近どう?」にうまく答えられないのは、
自分の感情が浅いからではなく、
言葉の方が追いついていないのかもしれません。
答えにくさは、悪いことではない
「最近どう?」にすぐ答えられない人は、
自分の状態を雑に扱っていない人でもあります。
簡単な一言で片づけず、
ちゃんと中を見ようとしている。
だからこそ、言葉が出てこない。
もし次にこの質問を投げかけられたら、
無理にうまく答えなくてもいいのかもしれません。
「言葉にするのが難しいけど、
今はそんな感じです」
それだけでも、十分に誠実な返答です。
会話は、必ずしも完成しなくていい
会話は、いつもきれいに完結しなくてもいい。
感情や状態は、途中のままで共有されてもいい。
「最近どう?」という質問が答えにくいのは、
私たちがちゃんと生きている証拠なのかもしれません。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉