「何を着たらいいかわからない」──その違和感の正体
朝、鏡の前で立ち止まる時間。
新しく買ったはずの服が、なぜか今日の自分にしっくりこない。
着飾っているのに、どこか“心が不在”のまま外に出ていくような感覚。
私たちはそんなとき、
「流行からズレているのかも」
「やっぱりセンスがないのかも」
と、自分を責めてしまうことがあります。
でも、本当の違和感の正体は──
“選ぶ基準が、自分の外側にあること” なのかもしれません。
ファッションは本来、トレンドの追従ではなく、
“自分自身との対話”から生まれるもの。
惹かれる服は、誰かの視線を気にして選んだものではなく、
「今日の私の心」に静かに寄り添ってくれるもの。
今回は、そんな感性を軸にしたファッションとの出会い方を、5つの視点からご紹介します。
1|リアル店舗で、服の「空気」を感じてみる
服は、ただ見た目だけで選ぶものではありません。
質感、空気感、色の揺らぎ──
それらは、画面越しでは感じとれないものです。
リアル店舗で実際に手に取ることで、
素材のぬくもり、シルエットの微差、服が放つ静かな“空気”に気づくことができます。
・とろみのある生地が、肩の力を抜いてくれる
・自然光の中で映える色が、自分の肌になじむ
そんな五感で選ぶ装いは、
きっとあなたの日常を、そっと整えてくれるはずです。
2|自宅に“姿見”を置くという、小さな革命
自宅にある“姿見”は、単なる鏡ではなく、
今の自分と向き合う場所でもあります。
鏡のなかの自分を、全身で映す。
それは、今日の気分、佇まい、過ごし方にまで意識を向ける時間。
「今日は、どんな一日を過ごしたい?」
「この服は、今の自分に調和している?」
そう問いかけることが、自分の内面をそっと調整してくれます。
服選びは、感情の輪郭を整える、繊細な習慣なのです。
ちなみに筆者も、少し前にお部屋に姿見を導入しました。
広い枠の中で自分と向き合えるので、とってもおすすめです。
3|“ひとさじの冒険”で、新しい扉を開いてみる
すべてを変える必要はありません。
ほんの少し、日常の装いに新しい要素を加えてみるだけで、
ファッションとの関係はしなやかに広がります。
たとえば──
・いつもは選ばない色のバッグをひとつだけ
・定番のコーデに、個性的なピアスをひとつ
すべてを変えるのではなく、“ひとさじ”だけの冒険。
その冒険をきっかけに、新しい自分を見つけたり、「似合ってる!」「かわいい!」というコミュニケーションにも繋がります。
この“ひとさじの冒険”が、
あなたの感性を、静かに更新してくれるかもしれません。
4|“ときめき”を言葉にしてみる
店頭や雑誌、SNSで「いいな」と思ったものに出会ったとき、
なぜ惹かれたのか、言葉にしてみるクセをつけてみましょう。
・「静かな色味が心地いい」
・「ラインが繊細で美しい」
・「この素材の手ざわりが、落ち着く」
こうして、自分の中にある感性を丁寧に言語化していくと、
少しずつ、自分だけの「美意識の地図」が描かれていきます。
「私は淡い色味が好きなんだ」、「繊細な質感が似合うかも」といった自分のときめきを集めていきましょう。
これは、トレンドではなく“私自身の軸”で選ぶための大切な羅針盤になります。
5|“他人の装い”に、ささやかな学びをもらう
街を歩いていて、ふと目をひく人がいる。
雑誌や映画で「素敵だな」と思うスタイリングに出会う。
そんなとき、その人の服のどこに惹かれたのか、
ひと呼吸おいて観察してみてください。
・服の素材と、その人の所作が調和している
・色と小物づかいが、知的にまとめられている
そこには、他人を通して“自分の好み”を探るヒントが眠っています。
他者を真似るのではなく、「私ならどう着たいか」と感性を磨く材料にすること。
装いを観察する行為そのものが、感性を育てる練習になります。
ファッションは、“自分を思い出す時間”
装うことは、自分を飾るだけでなく、思い出す時間でもあります。
「私はこういうものが好きだった」
「この素材に、心がほどけた」
そんな心の声に耳を澄ませながら、
服を選ぶ、という日々の営みをもう一度、やさしく捉え直してみてください。
ファッションは、感性を育てる旅のひとつ。
どうぞ、自分だけのペースで、美しい歩みを続けていけますように。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉