──生き方に“知性”を灯す言葉たち
「どうしても知りたい」
その想いが、人生を動かす。
15世紀、まだ“天が地を回る”と信じられていたヨーロッパ。
そんな世界で、命を懸けて地動説を追い求めた人々の物語──
それが、漫画『チ。-地球の運動について-』です。
ただの学問の話ではありません。
描かれるのは、知を求めることの尊さ、葛藤、恐れ、希望、そして生きることの本質。
読む者の心に深く響き、生き方そのものに問いを投げかけてきます。
今回は、そんな物語の中から、人生観を揺さぶるような名言を5つ厳選してご紹介します。
1. 「怖くない人生などその本質を欠く。」
──第1巻:フベルト
「そんな人生、怖くないのですか?」
地動説を研究し続けるフベルトに、ラファウはそう問いかけます。
フベルトの返答は、まっすぐで、静かに強い。
「怖い。だが、怖くない人生などその本質を欠く。」
新しい道を選ぶこと。
人と違う選択をすること。
何かを始めることも、続けることも、どこかに“怖さ”がつきまといます。
筆者自身も、デザインの道に進む決意や、転職、ブランド立ち上げ、そしてこのブログの運営など、
いくつもの“怖い”ことを選んできました。
でも、その"怖い"挑戦が、自分を成長させてくれる気がして、未来を構築していくのだと思います。
怖さは、何かに真剣である証拠。
それを抱えながらも前へ進むことにこそ、人生の“本質”があるのだと教えてくれます。
2. 「不正解は無意味を意味しません。」
──第1巻:ラファウ
命と引き換えに、地動説の正しさを証明するという選択をした青年・ラファウ。
異端審問官ノヴァクが問いかけます。
「この選択は、君の未来にとって“正解”だと思うのか?」
彼の答えは、行動そのものでした。
死に至る“間違い”かもしれないけれど、それが無意味だとは限らない。
自分が正しさを証明できなくても、未来の誰かが続けてくれるかもしれない。
私たちの日常にも、“正解かわからない選択”はあふれています。
キャリア、恋愛、人間関係…。
ときに傷つき、ときに失敗する。
でも、それが誰かの希望につながったり、自分の未来に意味を宿したりすることもある。
「今すぐ正解じゃなくても、きっと無意味じゃない。」
そんな勇気をくれる言葉です。
3. 「きっと、それが何かを知るということだ。」
──第3巻:バデーニ
金星の満ち欠けを見た直後、弟子オクジーがこう言います。
「ずっと前と同じ空を見てるのに、少し前からまるで違く見える。」
それに対してバデーニは、静かに答えます。
「だろうな。きっと、それが何かを知るということだ。」
知識は、視野を変えます。
それまで当たり前だった風景が、まったく違って見える瞬間。
その変化が、私たちを前に進めてくれます。
たとえば、筆者はワインがそこそこ好きなのですが、
多少の知識があることで「なんとなく美味しい」から、「この土地の、この品種の、この造り方だからこの香りになる」という解像度で感じられるとき、味わいの奥行きがまるで変わってきます。
知ることは、世界を新しく見ること。
その体験は、感性を育て、生きる手触りを豊かにしてくれます。
4. 「夢があれば一週間くらいは悲劇に耐えられる」
──第4巻:オクジー
読み書きを覚え、大学に通うという夢を持ち始めたオクジー。
厳しい現実の中でも、ふとこぼした一言に、深い希望が滲んでいます。
「夢があれば一週間くらいは悲劇に耐えられる」
毎日が辛く感じるとき、報われないと感じるとき。
それでも、目指したい“先”があることで、人は踏ん張ることができます。
受験、就活、転職、家庭や仕事での努力──
多くの人が経験しているはずです。
未来にある“光”があるからこそ、足元の道を信じて歩ける。
夢とは、時間の中に希望を灯すもの。
このセリフは、私たちの人生で、静かに背中を押してくれます。
5. 「その過程に、知性が宿る。」
──第6巻:ドゥルーヴ
「考えるために文字を学べ。本を読め。」
知識をためるためではなく、思考を深めるために学ぶのだ──
ドゥルーヴの言葉には、学びの本質が詰まっています。
「一見、無関係な情報と情報の間に関わりを見つけ出せ。
ただの情報を、使える知識に変えるんだ。
その過程に、知性が宿る。」
とっってもいい言葉だと思いました。
知識を身につけるためではなく、情報をすり合わせて新しい思考をする。
学ぶことの本質を教えてくれています。
学生時代の勉強、仕事での学び、読書、観察。
意味があるのかわからない時間も、すべてが知性の土壌になります。
知る→考える→選ぶ。
このプロセスがあれば、私たちはどんな状況でも、自分の選択で前に進むことができます。
おわりに:生き方に“知”の明かりを
『チ。』に登場する人物たちは、それぞれ違う立場や信念を持ちながらも、
“知ること”“信じること”にまっすぐ向き合っています。
現代に生きる私たちもまた、
正しさが揺らぐ日々や、怖さに満ちた選択の中で生きています。
だからこそ、彼らの言葉が胸に響くのでしょう。
知性とは、生き方に明かりを灯すもの。
あなたが今、迷いや不安を抱えているのなら、
『チ。』の名言が、静かな勇気をくれるかもしれません。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉