はじめに
「その話し方、誰に向けてる?」
仕事中の会議で「なるほど、でも私はこう思うんです」と話した直後、ふと気がつく。
プライベートな雑談では、そんな言い方はしないな、と。
働く毎日には、“話し方のモード”がいくつもあります。
ロジックで伝える場面もあれば、感覚を寄せ合う場面もある。
今回は、「仕事と日常、それぞれに必要な会話のあり方」について、少し言葉を整えてみたいと思います。
仕事は「ロジック」が鍵
“伝える”ではなく、“伝わる”が大事なとき
ビジネスの場では、相手に納得してもらうこと、共通の理解を得ることが目的です。
そのためには、「客観的な視点」や「論理的な理由づけ」が不可欠。
自分の立場や考えを明確に伝えること、いわゆる“ポジションを取る”ことも求められます。
例えば:
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私は〇〇だと考えています(理由は〜だからです)
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この方針にしたいと思うのは、こうした背景があるからです
これは相手を言い負かすための論理ではなく、
“互いの納得をつくる会話”のための技術です。
雑談では「感覚」が鍵
“わかる”と“わかってもらえる”は、少し違う
一方で、日常の会話や仕事中のちょっとした雑談には、「正しさ」よりも「やさしさ」が求められる場面があります。
たとえば、自分の体験を話しているときに、
「いや、私はそうは思わないな」と真っ向から否定されてしまうと、会話の糸が切れてしまいますよね。
雑談は、気持ちを共有する場所。
“答え”を出すのではなく、“気持ち”を寄せることが目的になることが多いのです。
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「それ、わかるなあ」
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「そういうとき、どうしてるの?」
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「なんかその話、好き」
そんな共感のひとことが、人と人との距離をふっと縮めてくれるのです。
たまに“逆”の人がいる
会議でふわっと共感、雑談で急に正論──それ、逆かもしれません
ときどき見かける光景。
仕事の打ち合わせで、
「わかります〜」「ですよね〜」と共感ばかりで、
誰も具体的な意見を出さず、時間だけが過ぎていく。
あるいは、日常の雑談で、
「でもそれってさ、こうじゃない?」と
まるで“議論”のような返しが返ってきて、空気がピンと張りつめてしまうこと。
大切なのは、どちらが良い/悪いではなく、
その場に求められている“温度”を読むこと。
そして、自分がその場にどんな言葉を届けたいのか、少し意識を向けてみることです。
まとめ:自分の“声”の持ち方
会話は、「何を話すか」だけでなく、「どう話すか」にも感性が問われます。
仕事では、ロジックで物事を動かす力。
日常では、感覚で人とつながる力。
どちらも私たちに必要なものです。
大切なのは、“どちらか”を選ぶことではなく、
自分の中にある複数の“声のモード”を知り、必要に応じて切り替えられること。
感性を閉じずに、思考も置いていかない。
そんなバランス感覚が、今日も働くあなたの背中をそっと支えてくれますように。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉