“っぽい”を作るのが、デザインの仕事

“っぽい”を作るのが、デザインの仕事

 

昨日のテーマの続編です。

デザインの仕事をしていると、

よく言われる言葉があります。


「◯◯っぽくしてください」


この言葉は、

一見すると曖昧で、無責任にも聞こえます。

でも実は、デザインの本質を突いた指示でもあります。

 

 

 

 

 

「っぽい」は、誰も定義できない

 

「高級っぽい」

「都会的っぽい」

「今っぽい」


どれも、辞書には載っていません。

数値化もできません。


それでも、人は不思議と

「分かる」と言います。


この“分かるけど説明できない感覚”こそが、

デザインが扱っている領域です。

 

 

 

 

 

正解を作る仕事ではない


デザインは、

正解を当てる仕事ではありません。


「これが唯一の正解です」と言えた瞬間、

それはもうデザインではなく、仕様になります。


デザインが扱うのは、

雰囲気・文脈・空気です。


つまり、

「そう見えるかどうか」。

 

 

 

 

 

 

“っぽさ”は、記号の集合体


“っぽい”は、完全な偶然ではありません。


形、素材、色、余白、重さ、音。

それらが積み重なって、

人の記憶や経験に引っかかる。


たとえば時計なら、

 

  • ケースの厚み

  • インデックスの処理

  • 文字盤の余白

  • 針の長さ

 


一つひとつは些細でも、

全体として「それっぽい」と感じさせる。


“っぽさ”は、

記号のバランスでできています。

 

 

 

 

 

 

「定義できないからこそ、仕事になる」

 

もし「ドレスウォッチとは何か」が

完全に定義されていたら、

 

  • 厚みは◯mmまで

  • ケース径は◯mm以内

  • 素材はこれ

 


と決まっていたら、

デザインの余地はほとんどありません。


でも現実は、

どこまでがOKか、誰にも言えない。


だからこそ、

感覚で判断する仕事が生まれます。

 

 

 

 

 

デザイナーは、“言語化できないもの”を扱う人


デザイナーは、

説明できないものを、形にする人です。


「なぜかいい」

「理由は分からないけど惹かれる」


その状態を、

意図的に作りにいく。


それが、“っぽい”を作るということです。

 

 

 

 

 

 

“っぽい”は、嘘ではない

 

曖昧だからといって、

“っぽい”は嘘ではありません。


むしろ、人が世界を理解する方法は、

ほとんどが“っぽい”です。


この人は信頼できそう。

この場所は落ち着きそう。

この服は自分らしそう。


すべて、

論理ではなく感覚で判断しています。

 

 

 

 

 

だからデザインは終わらない

 

“っぽさ”に正解はありません。

時代が変われば、

「それっぽい」も変わります。


だからデザインは、

何度でも更新される。


そして、

何年やっても「これで終わり」にはならない。

 

 

 

 

 

“っぽい”を作れるかどうか


デザインの仕事とは、

「説明できるもの」を作ることではなく、


説明できないのに、伝わるものを作ること。


“っぽい”を作れるかどうか。

それが、デザインの仕事の核心だと思っています。

 

 

 

 

 

それではまた明日──

 

SOWN 代表

片倉

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