── 欲望には賞味期限がある
ネットで見つけた服。
欲しい時計。
気になる家具。
その瞬間は、
「絶対欲しい」
と思う。
写真を何度も見て、レビューを読んで、サイズを確認して。
気づけば、頭の中はそのことでいっぱいになっている。
でも、そこで一度だけ、買うのをやめてみる。
翌日になると、少し熱が冷めている。
一週間後には、
「別にいらないかも」
となっている。
あれだけ欲しかったのに。
不思議なものだ。
欲しいものは、時間で変わる
僕は最近、欲しいものを見つけたときに、少しだけ時間を置くようにしている。
特に高いものほど、すぐには買わない。
一度カートに入れて、そのままにする。
お気に入りに登録して、しばらく忘れる。
そして数日後、もう一度見る。
すると、
「あれ? こんなに欲しかったっけ?」
と思うことがある。
その瞬間に気づく。
自分が欲しかったのは「モノ」そのものではなく、
そのモノを見つけた瞬間の高揚感だったのかもしれない。
新しいものを見つけた。
知らなかったブランドを知った。
誰かが使っているのを見た。
SNSで流れてきた。
そんな小さな刺激によって、欲望は簡単に生まれる。
でも、その刺激は長く続かない。
だから、時間を置くと消えてしまう。
欲望にも「賞味期限」がある
食べ物には賞味期限がある。
でも、欲望にも似たようなものがある気がする。
「今すぐ欲しい」という気持ちは、意外と鮮度が高い。
その鮮度が落ちると、急に興味がなくなる。
だからといって、その欲望が嘘だったわけではない。
その瞬間は、本当に欲しかったのだと思う。
ただ、それは「一時的な欲しさ」だった。
一方で、時間が経っても残っている欲望がある。
数日経っても気になる。
一ヶ月経っても忘れられない。
お店で見かけるたびに、やっぱりいいと思う。
そういうものは、少し違う。
熱が冷めても残っている。
それは、自分の中にちゃんと理由がある欲望なのかもしれない。
「欲しい」と「買いたい」は、少し違う
面白いのは、
「欲しい」と思うことと、
「買いたい」と思うことは、少し違うということだ。
欲しいものは、世の中にたくさんある。
かっこいい時計も欲しい。
新しい服も欲しい。
素敵な椅子も欲しい。
最新のガジェットも気になる。
でも、その全部を買いたいわけではない。
「欲しい」は感情で、
「買う」は決断なのかもしれない。
だから、間に時間を置く。
感情と決断の間に、ほんの少し距離をつくる。
それだけで、自分が本当に欲しいものが見えやすくなる。
デザインにも、少し似ている
これはモノを買うときだけではなく、デザインにも似ていると思う。
デザインを考えていると、
「これ、めちゃくちゃいい」
と思うアイデアが出てくることがある。
その瞬間は、自信満々だ。
でも、翌日に見てみると、
「……なんか違うな」
となることがある。
逆に、最初はそこまで強く惹かれなかった案が、何度も見ているうちに良く見えてくることもある。
その場の勢いではなく、時間を置いても残るもの。
そこには、何か理由がある。
だからデザインでも、すぐに結論を出さないことがある。
一度寝かせる。
少し離れる。
そして、もう一度見る。
時間は、感情を薄めるだけではなく、ノイズを取り除いてくれる。
大人になると「買わない」という選択が増える
20代の頃は、
「欲しいなら買えばいい」
と思っていた。
もちろん、それも一つの考え方だと思う。
でも、30代になってからは、少し変わった。
欲しいものを買うことよりも、
「これは本当に欲しいのか?」
と考える時間の方が面白くなってきた。
モノが増えれば、それだけ管理するものも増える。
服なら着る。
家具なら置く。
時計なら使う。
買った瞬間だけではなく、その後の時間まで含めて考えるようになる。
そうすると、
「欲しいけど、いらない」
という不思議な状態も増えてくる。
そして、それは悪いことではないと思う。
欲望を全部叶えることが、豊かさではないからだ。
本当に欲しいものは、待っても消えない
もちろん、何でも我慢すればいいわけではない。
欲しいと思ったら、すぐ買った方がいいものもある。
偶然見つけた一点ものだったり、今しか買えないものだったり。
衝動から始まった買い物が、あとから大切なものになることだってある。
だから、
「待つ=正しい」
という話でもない。
ただ、
「ちょっとだけ待ってみる」
という選択肢を持っているだけで、自分の欲望との付き合い方は少し変わる。
時間が経って、欲しくなくなったら、
「今の自分には必要なかった」
と分かる。
時間が経っても欲しかったら、
「やっぱり好きなんだ」
と分かる。
どちらに転んでも、自分について少し分かる。
そう考えると、待つことは我慢ではない。
自分の気持ちを確かめる時間なのかもしれない。
欲望には、賞味期限がある。
でも、賞味期限を過ぎても残っている「欲しい」は、少し特別だ。
だから、何かを欲しくなったとき。
すぐに買う前に、ほんの少しだけ待ってみる。
その数日間で消えてしまう欲望もあれば、
何度時間が経っても、まだそこにいる欲望もある。
そしてたぶん、
本当に欲しいものは、少しくらい待たせても、いなくならない。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉