夢を応援するって、どういうこと?
──アニメ『メダリスト』に見る、親と子のリアルな葛藤
「応援したいけれど、苦しむ姿は見たくない」
夢に向かって走り出そうとする誰かを見守るとき、そんな感情を抱いたことはないでしょうか。
アニメ『メダリスト』は、フィギュアスケートを題材にした作品ですが、単なるスポ根ものではありません。
夢に挑むことの痛みや、応援する側の葛藤までもが丁寧に描かれている作品です。
今回はその中でも、「親と子の葛藤」に焦点を当ててご紹介したいと思います。
いのりの夢と、母の願い
主人公の結束いのりは、ずっとフィギュアスケートをやりたいと思ってきました。
でも、いのりの母親は、彼女にスケートを続けてほしくないと考えています。
それは、いのりの姉がスケートで怪我をし、夢半ばで挫折したという過去を持っているから。
作中では、母親がこう語ります。
「上の子を見て思ったんです。
5歳から遊びもせずスケートだけを頑張って。
それでも結果が出ずに諦めて。辞めるときは、本当に可哀そうだった。
頑張っても報われないと分かっているものに、時間とお金をかけないでほしい」
視聴者目線では、「やりたいことをやらせてあげてほしい」と思うかもしれません。
でも、親目線でこの言葉に触れると、胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになります。(筆者には子供はいませんが)
“やりたいことをやらせて、幸せになるかもしれない”
“でも、報われずに苦しむくらいなら、平凡に過ごしてほしい”
このどちらを選ぶかは、とても難しい問いです。
目の前の大切な子どもが、傷つく姿なんて、見たくない。
それが親という存在なのかもしれません。
「伝わる瞬間」によって、道が開く
物語の中で、いのりは母親に想いをぶつけるのではなく、自分のスケートを通して伝えようとします。
その滑りを見た母は、心を動かされ、いのりの夢を応援することを決意します。
「やりたい」と言葉で叫ぶよりも、「やりたい」が伝わる瞬間。
この場面は、夢を追う人の“覚悟”と、応援する側の“理解”が交わる、とても美しい瞬間でした。
自分の経験と重なる気持ち
私自身、高校時代に進路を決めるとき、同じような葛藤を経験しました。
昔から何かをつくることが好きで、デザインの道を志したいと親に伝えたとき――
美大やデザイン系の学科は、学費だけでなく、画材や、入試に向けた予備校など、相当なお金がかかります。
親にとって、正直なところ、不安もあったと思います。
でも返ってきたのは、こういう言葉でした。
「本気で目指すなら、いいよ」
その一言が、どれほど背中を押してくれたか、今でも忘れられません。
その後、私は美術予備校に通い、浪人も経験し、親にはたくさんの迷惑をかけました。
それでも今、デザインの仕事に関わり、自分のブランド「SOWN」にも挑戦できているのは、あのとき“信じて応援してくれた”親の存在があったからだと感じています。
応援するって、「信じること」
『メダリスト』を見て、ふと自分の親との関係を思い出しました。
あのとき、何も保証されていない未来に、「やってみな」と言ってくれたこと。
きっと心の中には、不安や心配が山ほどあったと思います。
でも、“うまくいくかどうか”じゃなく、“あなたの覚悟を信じる”という姿勢で、私を支えてくれました。
夢に挑むとき、人は必ず不安になります。
でも、それを少しだけ軽くしてくれるのが、「信じてくれる誰か」の存在なのかもしれません。
そして今、応援する側の私たちへ
親と子の関係だけではなく、きっと私たちも、誰かの“選択”を見守る場面に出会うことがあります。
そのとき、「大丈夫かな」と不安になることも、「やめた方がいい」と言いたくなることもあるかもしれません。
でも、もしもその人が本気で何かをやろうとしているのなら、
「信じて、応援してあげること」こそが、最高のエールになるのかもしれない。
『メダリスト』は、そんなことを優しく教えてくれる作品でした。
心に残る一言
「頑張っても報われないとわかっているものに、時間とお金をかけないでほしい」
── それでも、応援することを選んだ母の姿が、心を打ちました。
もしお時間があれば、"メダリスト" ぜひ視聴して見てください。
きっと、あなたも勇気をもらえると思います。
それではまた明日──
SOWN 代表
片倉